なぜ3か国で共同開発するのか
日本、イギリス、イタリアの3か国が共同で次期戦闘機を開発する「GCAP(グローバル戦闘航空プログラム)」。この枠組みが注目される最大の理由は、日本にとって初めての対等なパートナーシップによる戦闘機の国際共同開発だからです。
かつてF-2戦闘機は日米で共同開発されましたが、その際は米国が設計の主導的な立場にありました。GCAPでは3か国が対等な立場で参画し、設計・開発から生産・維持まで一貫して共同で進める点が大きく異なります。2022年12月に3か国首脳が共同発表を行った後、開発を統括する国際機関「GIGO(GCAP国際政府機関)」の設立が進められ、本部はイギリスに置かれることが決まりました。各国の役割分担や意思決定の仕組み、知的財産の取り扱いなど、技術以前に解決すべき外交・制度面の課題が山積する中、3か国の交渉担当者が精力的に調整を続けています。
インド太平洋と欧州をつなぐ安全保障協力
GCAPは単なる戦闘機開発計画にとどまらず、インド太平洋地域と欧州をつなぐ安全保障協力の象徴として国際的に注目されています。イギリスは2021年の統合レビューで「インド太平洋への傾斜(ティルト)」政策を掲げ、アジア太平洋地域への軍事的・外交的関与を強めています。空母クイーン・エリザベスの西太平洋展開や、日英円滑化協定(RAA)の締結など、その動きは加速しています。
イタリアもNATO加盟国として国際的な防衛協力に積極的で、欧州の安全保障とインド太平洋の安定が不可分であるとの認識を深めています。日本にとっては、日米同盟を基軸としつつも、欧州の同志国との防衛関係を多層的に築く画期的な取り組みです。GCAPを通じて培われる信頼関係と運用面での連携は、戦闘機という一つの装備品を超え、3か国間の安全保障協力全体を底上げする効果が期待されています。
防衛産業基盤の存続をかけた戦略的判断
GCAPのもうひとつの重要な側面は、各国の防衛産業基盤の維持・強化です。第6世代戦闘機の開発には数兆円規模の費用と最先端の技術力が必要とされ、一国だけですべてを賄うことは年々困難になっています。3か国で開発費を分担し、それぞれの得意分野──日本のセンサー・エンジン技術、イギリスの統合システム設計、イタリアの機体構造技術──を持ち寄ることで、コストを抑えつつ最高水準の戦闘機を実現するという戦略です。
日本の航空産業にとって、次期戦闘機の開発に主体的に参画できるかどうかは、将来の技術基盤そのものの存続に関わる死活問題です。F-2の退役後に国内から戦闘機の設計・製造能力が失われれば、その回復には数十年を要するとも言われています。GCAPへの参画は、日本の防衛産業の未来を左右する戦略的決断なのです。
2035年の配備に向けた道のり
GCAPは2035年頃の配備開始を目指しており、今後10年間で概念設計から詳細設計、試作機の製造、初飛行、各種試験までを段階的に進める計画です。3か国の政治情勢の変化や予算確保の課題、技術的なハードルの解決など、乗り越えるべき障壁は決して少なくありません。しかし、この国際共同開発が成功すれば、日本の防衛外交と航空技術の歴史に新たな1ページが刻まれることは間違いないでしょう。
※本記事は防衛省の公開情報からご紹介しております。

